東京|天空樹(とうきょうてんくうじゅ)【白色の本12】
先日は、終末世界の廃墟に佇む巨大建築物を描いた画集を紹介しましたが、今回は、東京に佇む、出来たて巨大建築物をモチーフにした写真集を持ってきました。
”スカイツリー” ならぬ ”天空樹”。なるほどです。
中身はタイトルの通り、スカイツリーを時系列で追った写真集です。
コチラは建築中のもの。
しかし、ただのスカイツリーの写真集であれば食傷気味の東京都民にとって目を引くものはありません。
この写真集のすごさは、見開きのこのインパクトです。
これ、今まで見た中でも抜群のパノラマ具合です。
もう一度貼ってみます。キューピーちゃんが霞んで見えますね。
最近のパノラマは凄いなあと思っていたのですが、どうやら複数枚の写真を合成して作られているようです。
ここに収められた写真では、一つの風景が複数のショットによって捉えられ、再び一枚につなぎ合わせられることで、
すべての細部に焦点があった映像を眼前に表す。
なるほど、他で見ないほど圧巻のパノラマには理由があったのですね。
このパノラマ具合に加えて、人並みや街並みをしっかり捉えているところも見ていて楽しいです。
最近はこういうミニチュア風撮影 | TEDDY-PLAZA
ミニチュア写真が流行っていますが、やはり大きなカメラで高い位置から撮った本物の『神の目線』の方が面白く感じます。
ミニチュアはパッと見は楽しいですけど、流行り過ぎてお腹いっぱいです。
作者の佐藤信太郎さんは『東京|天空樹』の前に、
繁華街の非常階段やネオンサインを撮った作品を出されていました。
目の付け所は良くてコンセプトは好みだったのですが、繁華街に特有の、人間の業や渦巻くエネルギーを捉えきれていない感じがして購入には至りませんでした。
ですがこの『東京|天空樹』は、そういった禍々しいところから離れて大空から神の視点で持って東京の下町を捉えている感じがします。
佐藤信太郎さんの目線はこの感じがいいなと思いました。
人びとの生活や風景を丁寧に切り取る様が、とても良い本です。
※※ この本に似た作品にリンクします。お好きな次回を選んでください※※
■次回
下町を一望したこちらの作品に対して、
下町の暮らしを時系列的に一望した作品はいかがでしょうか。
戦後から2000年代までテンポ良くまとまっており、
小旅行に行ったような心地になります。
■次回
スカイツリーのような「真面目」な建築に対して、
バブルの賑いの中でそびえ立った虚像はいかがでしょうか。
スカイツリーとの建築の違いを見るのも一興です。
全身が金の「ゴールデンタワー」など、作者都筑響一さんのニヒルな目線も加わって、いっそう毒々しい一冊です。