高山正隆と大正ピクトリアリズム【黒色の本7】
先日は昭和の投稿写真雑誌を紹介しましたが、今回は、それよりも遥かに昔でありながらもアートとして完成された写真集を持ってきました。
大正末から昭和初期にかけて,抒情的なソフトフォーカス写真などで,竹久夢二や萩原朔太郎に通じる浪漫世界を表現した高山正隆(1895-1981)を中心に,絵画的傾向の強い写真家たちを紹介する.
中は見開きで写真が紹介されています。
写真でありながらも叙情的な絵画のような、銅版画のような作品です。
これが大正時代の作品なんて!
大正時代はアートのように写真を取ることが流行った時代だったそうです。
その後、『存在するものを存在するように撮る』事が主流になり、このようなピクトリアリズムのブームはなくなってしまったのだとか。
ピクトリアリスム(ピクトリアリズム、英:pictorialism, 仏:pictorialisme)とは、乾板写真が広く導入された後、1885年ころから流行した写真の潮流に与えられる名前である。20世紀の初期に最高潮に達して、モダニズム写真が広い範囲にわたって出現した後の1914年以後急速に衰退した。
19世紀、写真技術の科学者と写真師は同じくくりで扱われていたが、このことに芸術としての写真を目指すものたちが不満をもったのが、ピクトリアリズム写真誕生のきっかけである。
1910年ごろからストレートフォトグラフィが普及するに伴い、絵画を模倣するような作品は写真の本来の姿ではないなどと厳しい批判の対象とされてそれ以前の勢力は失った。
当時は写真技術者と写真師が同一視されていたのですね。
今のように「写真家」という称号すらない時代、写真がアートであることは既存のアート(絵画)を模倣することでしか伝わらなかったということでしょうか。
写真のような絵画のような‥。
今は廃れてしまったこの静寂な世界は、いわばアートのパラレルワールドかもしれませんね。
※※ この本に似た作品にリンクします。お好きな次回を選んでください※※
■次回
ピクトグラム繋がりで、ウィトキンを。銅版画のような絵画性の高い写真です。
でもかなりグロテスクです。お食事中の方はお避けくださいね。
■次回
”懐かしいけど新しい”繋がりで、万葉集をリミックスした写真詩集を。
現代語訳された万葉集は、日本最古の歌集にも関わらず新鮮な驚きを与えてくれます。
有名無名関わらず載せてある写真も素晴らしいです。