O脚の膝(今橋愛 歌集)【白色の本8】
先日は、平坦な毎日の中にある平坦な恋心とSEXを織り込んだ山本直樹の漫画を紹介しましたが、今回はそれと感覚が非常に似ている今橋愛さんの歌集を持ってきました。
本は絶版なのでしょうか、探しても見つからずリンク先はKindle版となっています。
【 収録歌抄 】
「水菜買いにきた」
三時間高速をとばしてこのへやに
みずな
かいに。
この口は夏のせみよりくりかえすどんなにあなたにみにくいだろう
こくごの本
そらでとなえる少女らに
しあわせ
ふつうの二倍あげて
うしろからみみみみあまくされたとき
もっとどきどきしてしまいます
日常の非日常さを短歌に刻む点では、穂村弘さんなどと似た作風なのかと思います。
個人的にはこの、ひらがなを多用するのに見難くはない点が好ましいです。
付き合っている過程の男女の姿を詠んだ歌が多いのですが、
行為のさなかにも別れ(滅び)を予感させるような覚めた目線が秀逸です。
覚めた目線の中にも、でもこの心地いい ”彼” とずっと一緒にいたいと切望しているような、切ない女性ごころが感じられます。
歌集ですので、淡々と歌が並べられています。
個人的には、歌集はKindleではなくて本で読みたいものです。
そうは言っても流通や出版の関係で難しいでしょうね。
Kindle版が出たことは素直にお祝いしたいです。
O脚の膝(今橋愛 歌集)
■次回
歌で男女の恋仲を詠う。古今変わらない人間の姿かもしれません。次回はそんな日本最古の歌集 ”万葉集” を取り上げた歌集を持ってきます。次回もお楽しみに。