未来図書

未来食堂の蔵書一覧。画集や写真集などの珍しい本を紹介しています。

萬―懐古文化綜合誌 (臨時増刊号)【銀色の本2】

先日は、海外のぐにゃぐにゃとした建築を特集した雑誌を紹介しましたが、今回も、特殊な建築を特集した雑誌を持ってきました。

 

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萬―懐古文化綜合誌 (臨時増刊号)

 

”特殊な建築”と書きましたが、全国各地の有名廃墟を特集した雑誌です。

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雑誌というよりもいくぶん同人誌的なものを感じます。

 

サブカルから始まった廃墟ブームの遍歴は以前記事に書きましたが、
こちらの雑誌は1999年に販売。廃墟ブームが来る前の雑誌です。

そのため現在受け入れられている廃墟の切り取り方と異なる点もあり
見比べてみると興味深いです。

 

白黒のページには思い出の喫茶店特集などがあり、
廃墟一本建てというよりも、”懐古文化”のなかの一要素として廃墟が出てくる感じが興味深かったです。

 

萬―懐古文化綜合誌 (臨時増刊号)

 

たしかに15年位前に買った気がします。中高生だった。

 


※※ この本に似た作品にリンクします。お好きな次回を選んでください※※
■次回
”廃墟先駆け”から視点を変えて、廃墟ブーム真っ盛りの頃に出版された写真集はいかがでしょうか。遊園地やテーマパークに絞った廃墟集は、うら寂しさもひとしおです。


■次回
同人誌的な雑誌繋がりで、同人誌ど真ん中の雑誌はいかがでしょうか。
”アマチュア女装誌”のエネルギーに圧倒されること間違いありません。


黄建勲の「旬菜果」【緑色の本3】

先日は、作りこまれたサスペンスドラマのような風景写真集を紹介しました が、今回は、劇的に作りこまれた野菜の写真集を持ってきました。

 

 

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黄建勲の「旬菜果」

 

黄建勲さんの作品紹介は2冊めです。以前はこちらの本を紹介しました。

 

基本的に同じ作家さんの本は1冊しか蔵書しないルールがあるのですが、
この黄建勲さんの作品に関しては選び難く、2冊所持しています。

 

見てくださいこの白菜!

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この豪快なズッキーニの落下!モーション付いています。
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黄建勲さんは昭和の”フードフォトグラファー”のようです。
ひたすら勢いあるCGの様な作風は、今となっては全然美味しそうに見えません。
でもそれがいいのです。

 

時代の美意識はここまでうつろうものなのかと、驚かされる一冊です。
先日紹介した黄建勲のフードフォトグラフィ(シズル感のすべて(!)) と比べると、こちらは素材をメインに撮影されています。
とてもダイナミックです。

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落下する柿(!) 

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あまり知られていませんが、胸を張っておすすめできる一冊です。
昭和とシュール、フードが掛け合わさった異色世界をお楽しみください。

 

黄建勲の「旬菜果」 


※※ この本に似た作品にリンクします。お好きな次回を選んでください※※
■次回
真面目にやっているのになんだかシュール、といえばこちらの発明写真集です。
 


■次回
シュールの王道、マグリットを改めて読み返してみるのも一興です。



遅刻者(金子千佳)【白色の本12】

先日は、内面世界にずぶずぶと沈み込んでいくような母性的暗闇を描いた画集を紹介しましたが、今回も同じく、内的世界に沈み込んでいく詩集を持ってきました。

 

 

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遅刻者(金子千佳)

 

現代詩集です。開きやすい装丁です。

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この本は国会図書館にも蔵書されておらず、幻の本として有名です。

 

現代詩は読みづらかったり理解できない所が多いのであまり蔵書はありませんが
この”遅刻者”は、理解できないながらに好きな一冊です。

遅刻者というタイトルの通り、”間に合わない”切なさや無常をテーマにした作品が多いからでしょうか。


いろんな箇所から抜粋してみますね。

わたしはあなたからほどこえている

あなたをいくたびも失くしている

あなたがかいくぐってきた時間の膜を
すべりおとしてしまいたいのに
わたしにはもう読みつなぐことができない

あなたが不在する
いくつもの夏を
指先で
なつかしく剥がしてゆく

 

うーん、こうやって切り取りするとポップソングの歌詞みたいですね。
実際はもっと幽明としていて繊細なのですが。
詩は、”分かる”ところだけ切り抜くと途端に空気が失われるのかもしれません。

 作品は、なかでも『不在』に焦点が絞られています。
いつかはここに在った”あなた”と、そこにまつわる全ての物語への鎮魂曲
と感じました。

 

この本は八本脚の蝶という日記作品でオススメされていた作品です。
当時も高い値が付いていたのですが、残り一冊を買った覚えがあります。

 

遅刻者(金子千佳) 

 

『実物を見たかった!』という方はぜひどうぞ。


※※ この本に似た作品にリンクします。お好きな次回を選んでください※※
■次回
自分が出会った中で大きな影響を与えてくれた人は、様々いますが二階堂奥歯さんもその一人。高校生の時に数回お会いしただけであっても、今も脳裏に焼き付いています。”遅刻者”に言及している記事を読むのも一興です。


■次回
不在でありながらも鮮やかに感情を共有する…といえば古典です。
今も読み継がれる百人一首をオールカラーでお楽しみください。

 

■次回
『不在するために/いつでも/あなたはゆらゆらしている/その揺れはばを/はかりきることができなくて/わたしは膝をかかえこむ』とは詩の中の一片ですが、
時や時間を溶かしこんだような作風は、なぜだかダリを彷彿とさせます。
溶けた時計で有名なダリを、大判でお楽しみください。

 

東京|天空樹(とうきょうてんくうじゅ)【白色の本12】

先日は、終末世界の廃墟に佇む巨大建築物を描いた画集を紹介しましたが、今回は、東京に佇む、出来たて巨大建築物をモチーフにした写真集を持ってきました。

 

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東京|天空樹(とうきょうてんくうじゅ)

 

スカイツリー” ならぬ ”天空樹”。なるほどです。
中身はタイトルの通り、スカイツリーを時系列で追った写真集です。
コチラは建築中のもの。

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しかし、ただのスカイツリーの写真集であれば食傷気味の東京都民にとって目を引くものはありません。
この写真集のすごさは、見開きのこのインパクトです。

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これ、今まで見た中でも抜群のパノラマ具合です。
もう一度貼ってみます。キューピーちゃんが霞んで見えますね。
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最近のパノラマは凄いなあと思っていたのですが、どうやら複数枚の写真を合成して作られているようです。

ここに収められた写真では、一つの風景が複数のショットによって捉えられ、再び一枚につなぎ合わせられることで、
すべての細部に焦点があった映像を眼前に表す。

Amazon.co.jp: 東京|天空樹(とうきょうてんくうじゅ): 佐藤 信太郎: 本


なるほど、他で見ないほど圧巻のパノラマには理由があったのですね。

 

このパノラマ具合に加えて、人並みや街並みをしっかり捉えているところも見ていて楽しいです。

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最近はこういう
http://teddy-plaza.sakura.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2012/11/P1010858-tiltshift.jpgミニチュア風撮影 | TEDDY-PLAZA

ミニチュア写真が流行っていますが、やはり大きなカメラで高い位置から撮った本物の『神の目線』の方が面白く感じます。

ミニチュアはパッと見は楽しいですけど、流行り過ぎてお腹いっぱいです。

 

作者の佐藤信太郎さんは『東京|天空樹』の前に、
繁華街の非常階段やネオンサインを撮った作品を出されていました。
 

目の付け所は良くてコンセプトは好みだったのですが、繁華街に特有の、人間の業や渦巻くエネルギーを捉えきれていない感じがして購入には至りませんでした。

ですがこの『東京|天空樹』は、そういった禍々しいところから離れて大空から神の視点で持って東京の下町を捉えている感じがします。
佐藤信太郎さんの目線はこの感じがいいなと思いました。
人びとの生活や風景を丁寧に切り取る様が、とても良い本です。

 

東京|天空樹(とうきょうてんくうじゅ)


※※ この本に似た作品にリンクします。お好きな次回を選んでください※※
■次回
下町を一望したこちらの作品に対して、
下町の暮らしを時系列的に一望した作品はいかがでしょうか。
戦後から2000年代までテンポ良くまとまっており、
小旅行に行ったような心地になります。

■次回
スカイツリーのような「真面目」な建築に対して、
バブルの賑いの中でそびえ立った虚像はいかがでしょうか。
スカイツリーとの建築の違いを見るのも一興です。
全身が金の「ゴールデンタワー」など、作者都筑響一さんのニヒルな目線も加わって、いっそう毒々しい一冊です。

Water Planet 02(ウォータープラネット02)【銀色の本2】

先日は、強烈な色彩で地球の未来を警告したCGアート写真集を紹介しましたが、今回はアート路線で地球の行く末を捉えた作品を持ってきました。

 

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Water Planet 02

 

インターネットでこの本のことを調べたのですが、全然情報がなく、
先ほど上げたリンク先はこの本をデザインした会社のようです。
『世界8カ国同時発売!』と銘打っているものの、本屋に果たして並んでいたのかな。

 

中身は、様々なアーティストの「水」をテーマにした作品が並んでいます。
装丁も凝っていておしゃれな本です。

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一番目の写真に赤い染みがあるのは、実は中に赤い色水が入っていたためです。
水が入ったパッケージの中に本が入っていました。オシャレですね。

もともとこの本は、中に載っているアーティストの一人、
浜崎健さんから譲っていただいたものです(買ったっけな、思い出せない…)

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載っている作品は、絵画などというよりもプロダクト寄りのものが多く、
アート性の高い日常用具を紹介している感じです。

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これは、水の反響を利用したスピーカーです。

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Water Planet 02

 

2001年位の発行にしてはあまり古びた感じはありません。
ある意味これもサブカルの範疇でしょうか。

※※ この本に似た作品にリンクします。お好きな次回を選んでください※※
■次回
地球の行く末を考える、有名なこのアニメはいかがでしょうか。
フィルムブックなので、聞き逃したセリフも分かりやすく読み返せます。


■次回
たまにはこんなコジャレた本も良い物です。
同じコジャレ繋がりで、アートの装丁が色濃い『アイデア』はいかがでしょうか。
発行年度も同じくらいで、当時の空気が感じられます。