未来図書

未来食堂の蔵書一覧。画集や写真集などの珍しい本を紹介しています。

ヨウルのラップ - 成田舞【黒色の本4】

 
先日は、やさしさと隣り合わせに存在する怖さ、生と死を強く感じさせる写真集を紹介しました。彼女の作風に似た作品は巷に多く出回っていますが、そんな中でも、突き抜けて目を見張る作品集を持ってきました。

 
ヨウルのラップ - 成田舞
ヨウルのラップ

 
作者の成田舞さんは、大賞・川内倫子賞 をダブル受賞されています。

人間の内奥とそれを取り囲む世界を
瞬間的に捉えたような、見たことのない強烈な光

祖父江慎平野敬子、町口覚、川内倫子、ノニータ、藤代冥砂。錚々たる審査員たちにより大賞に選ばれた成田舞。
「改めて見てみても、やっぱり1等賞。」(祖父江慎)「私自身の審美眼を問われ、揺さぶられ続けた。」(平野敬子)と言わしめた大賞受賞作がついに写真集に。今まさに突き刺さる鮮烈なイメージを携えて、新しい才能がデビューします。
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無視したくてもできない、人間の持つ本能的で原始的なもの、繰り返し見ては、答えのない迷路にいると実感する。
自分たちはそれを抱えながら生きていくことしかできない、小さな生き物なんだときづかされる。
──川内倫子(帯より)

 
ヨウルのラップ - 成田舞

 
個人的には、川内倫子さんの作風と似たものを感じます。対象を明確に切り取らずに、夢の中のような曖昧な感覚を捉えるような。川内倫子さんは水色ベースで、成田舞さんは黒色ベース、という違いがあるかな。

 
ヨウルのラップ - 成田舞

 
幾度も幾度も時間に洗われ、それでもこびりついているいくつかの残像。無邪気に無自覚に、永遠と信じていたいつかの、鮮やかで不完全な記憶。
そんな、胸を掻きむしられるような感覚が走ります。

 
ヨウルのラップ - 成田舞

 
あまりに衝撃を受けて、過去に展示された画廊から個別に、他の作品も取り寄せました。ダブル受賞も納得です。
ヨウルのラップ - 成田舞
 
 
個人的にはこんな作り込んだ写真も、不思議な感じがして好きです。
ヨウルのラップ - 成田舞
作者の方ともお話する機会があったのですが、こういった”セットを作って撮る写真”は大変だけど面白いから好きだとか(なにか技法的な名前を聞いたのですが忘れてしまった)。次回作が楽しみです。
 
ヨウルのラップ

  
■次回
作りこんだ写真。普段写真を見慣れていない人でも楽しめる、映画のセットのような写真も楽しいですよね。次回はそんな写真集を持ってきます。次回もお楽しみに。
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