八本脚の蝶【黒色の本2】
先日は、高齢になっても輝く個性を発揮されているファッション写真集を紹介しましたが、今回は、00年台に夭折されたとある女性編集者の日記を持ってきました。
内容はAmazonにもたくさんレビューが有ります。
私という一冊の本を、私が破棄してはいけない? いけない。そんなことをしてはいけない。私は、物語をまもる者だから。今も、そして死の最後の瞬間にも。若き女性編集者の、深遠で切実な心の記録。伝説のウェブ日記を書籍化。
膨大な読書量をもち、いわゆるサブカルチャーにも造詣が深かった彼女は、それ自体で一つの作品のようでした。
内容は当時のブログをまとめたもので、現在もネット上に公開されているものと同じです。
長らく重版が待たれていましたが、数年前に重版の運びとなりました。
少し時代を感じさせるインターネット上のコミニティのあり方なども、当時の趣を感じさせられます。
自分は個人的に数回、奥歯さんとはお会いしたことがあるのですが、今になっても鮮やかに彼女の姿を思い出します。初めてお会いした時は、今はなき渋谷の美蕾樹(ミラージュ)という画廊で。物珍しい雰囲気に気圧されている私を尻目に、ごく自然にくつろいで事務所にまで入っていく奥歯さんの姿だとか。
お会いした時の一日も刻まれていて、個人的にも読むたびに少し切なくなります。
八本脚の蝶
■次回
今回は少し悲しい紹介になってしまいました。”物語”を抱えた宝石のような一人の人間。その奥深さに魅了されるのかもしれません。次回は”物語を抱えている”繋がりで、小宇宙が広がる不思議な小箱の作品集を持ってきます。次回もお楽しみに。
→次へ進む