黄建勲のフードフォトグラフィー―シズル感のすべて【茶色の本3】
先日は、日本の現代アートを紹介したアソート作品集を紹介しましたが、今日は、レトロながら一周回って新しさを感じさせるフード系写真集を持ってきました。
シズル感!の!すべて!
1987年発行。
個人的な趣味になりますが、
家庭科の教科書の様な ”美味しくなさそうな料理写真” がとても好きです。
わざとらしい銀細工のカトラリーやレースペーパ、昭和レトロな花柄茶碗などなど。。
ですが「昭和の家庭科みたいな、美味しくなさそうな食事の写真はないかな」と調べていても、そんな調べ方では今まで辿り着けずにいました。
偶然見つけたこの本は「フードフォトグラフィー」の本。
なんでも、昭和の一時期に大ヒットした写真のとり方のようで、
私の好みにドストライクでした!
この美味しくなさそうな甘エビの刺し身!山盛りすぎます。
作者も日本人ではない(黄建勲さん)こともあり、
日本の美的センスとは違った、豪快な持ち味があります。
海老の落下!これがシズル感なのか?
巻末には機材やライティングの詳細を記載しており、
この「フードフォトグラフィー」を啓蒙しようとする心意気が感じられます。
当時はこれがナウかったのか、、感慨深いです。
何処に行ってもこの写真集の情報はあまりないかと思います。
ぜひ未来食堂で実物をお確かめくださいね。
嘘っぽい感じが惹かれるのかな。食品サンプルを愛でるような。。
シュールな感じがドキドキします。
※※ この本に似た作品にリンクします。お好きな次回を選んでください※※
■次回
食べ物が食べ物で無くなる感じ。
お菓子をモチーフとした詩集の、美味しくないお菓子達はいかがでしょうか。
■次回
色調鮮やかで大量に物が並ぶ写真は、少しグロテスクな雰囲気もあります。
そんな感覚を突き詰めた、鮮やかでややグロテスクな写真集はいかがでしょうか。
アイノカテゴリー(みうらじゅん)【緑色の本2】
先日は、世紀末の珍品を取り集めた図鑑を紹介しましたが、今回は著者一人が撮り続けた”珍”な風景を集めた写真集を持ってきました。
十数年間に渡って撮り続けた「アイ」のある風景。みうらじゅん初の写真集。
新聞の誤字や斜め上を行く看板のイラスト。
いわゆるVOWに代表されるように、まちなかの変な物スナップは不動の人気を誇ります。
しかしこの「アイノカテゴリー」が素晴らしいのは、
そんな「くすっ」の笑いを超えた作品集である事。
作者まえがきにもありますが、万物に対する慈しみの目が素晴らしい。
綺麗なものも汚いものも聖も穢れも、全てを平等に切り取って、
ニコニコ笑えるラベルを張ります。
「アイって実はこの世の中に満ち溢れているんだ」
他愛無い芸をして笑いを取る子どものような、
くったくのないみうらじゅんさんの人となりが伺えます。
「アイ」のある、賛歌のような一冊です。
Amazonでは安値だけれど、、もっと評価されていい作品です。
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■次回
クスッと笑える面白くて珍しいもの。
「役に立たないこと」を目的として作られた珍道具集はいかがでしょうか。
■次回
女性下着も仏像も墓石も、改めて捉え直すと意味が変形していきます。
日本風俗のワンダーランド、”イメクラ”に焦点を当てたこの写真集は、
色んな意味が歪んで迫ってきます。
La maison de Jean-Pierre Raynaud : Construction Destruction 1969-1993【白色の本12】
先日は、布が重なったような珍しい建築が載っている建築雑誌を紹介しましたが、今日は、 個人的に一番惹きつけられる、孤独で美しい「家」の写真集を持ってきました。
La maison de Jean-Pierre Raynaud : Construction Destruction 1969-1993
ジャン=ピエール・レイノーさんは、現代美術家です。彼の名前を一躍有名にしたのはこの写真集にも記載されている、彼の「家」です。
床、壁、天井そしてベッドなどの家具にいたるまで、文字通り全てが15cm四方の白いタイルで張られた家。その“家兼作品兼アトリエ”は、アーティストが一人孤独の内にインスピレーションを得る源となっていた。
すべての表面を白タイルで張り詰め、直線と鉱物だけで表現されたような無機質な空間が広がります。 ただただ美しい。 2001年宇宙の旅のラストシーンを思い出します。こんな感じでしたね。
本作品は、フランスの現代美術家レイノーにとって非常に特別な出来事――1969年に建設し、その後23年間にわたって完璧な美的水準に到達するまで手を入れることで、彼の最高傑作となった家を自ら破壊する行為――をとらえた貴重な映像である
最高に孤独で美しいこの家は、自身の手で取り壊されてしまいます。 作品が幸福な結末を迎えるために、自分の手で取り壊す必要があったと説明しています。
このジャン=ピエール・レイノーの白タイルの家が
とても気になって探し求めたのですが作品集が今まで見つけられず。
たった1ページだけ「家」が載っている彼の別の作品集を持っていましたが、この作品集を買うことが出来たので以前の作品集はお譲りしました。 日本で買うと6500円と高いですが、ドイツ(Amazon.de)ではもっと安かったです。
La maison de Jean-Pierre Raynaud : Construction Destruction 1969-1993
まるで恋愛の始まりから終焉までを見届けたような気になる一冊です。
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■次回
引き込まれるような「空間」を楽しみたいなら、巨大なこの建築写真集はいかがでしょうか。 大画面で見る安藤忠雄さんの建築物は圧巻の一言です。
■次回
近未来のような異次元のような空間といえば、映画「クレマスター」です。 こちらの本は、映画のシーンを始め奇妙で静謐なショットがたくさん収められています。
きつねこあり(日本SF展『SFの国』限定商品)【水色の本4】
先日は、アジアの迷宮のような異世界を猫が駆け巡るシュール系SF漫画を紹介しましたが、今回は動物&SF繋がりで、動物が主役のSF豆本を持ってきました。
今夏開催する「日本SF展・SFの国」(2014年7月19日~9月28日)の会場限定商品。 『きつねこあり』 筒井康隆「きつね」、星新一「ネコ」、小松左京「アリ」の3編を1冊に収録 48ページ/68mm×52mm/無線綴じ製本
筒井康隆、星新一、小松左京という大御所3人の短編が収められています。
「きつねこあり」というタイトルから単に動物が主役なだけだろうと思っていましたが、 作者の持ち味が色濃く出ているものが選び抜かれていて感動しました。
たとえば星新一の「ネコ」であれば星新一らしい”オチ”の鋭い作品。
風刺的なトーンも星新一らしい。
そんな”らしさ”をきちんと詰め込んだ一冊。
SF展の商品だけあって気合が感じられます。
限定販売とのことなので今は買えないのかな。
プレゼントにも最適な一冊です。
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■次回
SF繋がりで、2億年後の地球を描いた漫画はいかがでしょうか。
500万年後、1億年後、2億年後と時間を区切った短篇集です。
■次回
異世界繋がりで、不思議な日常を詰め込んだ写真集を。
大掛かりなセットを組んで撮影される作品たちは、まるでトリックアートのように歪んだ日常を映しています。
ノスタルジア―高梨豊写真集【白色の本11】
先日は、日本中の見慣れているはずなのにどこか奇妙な空気の漂うモノクロ風景写真を紹介しましたが、今回も、日常に潜む異形を撮り上げたカラー写真集を持ってきました。
『異形』とは書きましたが、日常何気なく見ているものがカメラのレンズを通していびつなオーラを放っている感じです。
高梨/豊
1935年、東京・牛込に生まれる。1964年に第8回日本写真批評家協会新人賞を、67年に第5回パリ国際青年ビエンナーレ写真部門大賞を受賞。84年と93年に、日本写真協会年度賞を受賞。91年、第3回「写真の会」賞を受賞。94年、赤瀬川原平、秋山祐徳太子と共に「ライカ同盟」を結成。現在、東京造形大学客員教授
ノスタルジアというタイトルの通り、見たことはない歪な空間であっても
どこか懐かしさを感じさせます。
白昼夢のような写真は、サイズも大きく全面カラーで良心的です。
本の中に小さなモノクロ作品集が挟まれています。
カラー/モノクロ問わず作品点数も多く、値段を考えてもオススメの一冊です。
こういう、日常の歪みを切り取った作品が好きです。
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■次回
『ノスタルジア』と聞いて何が思い浮かぶでしょうか。
間違いなくそのうちの一つが、このミニチュア写真集に収められています。